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検証:3Dアニメに輪郭線は必要か?その1 

3Dに輪郭線は必要か?このテーマでしばらくブログの更新をしてみたいと思います。
なお、「検証:3Dアニメはなぜ動きが硬いのか?」のシリーズも続編を執筆中です。こちらは最終章に向けて実際のデモを作ってますので、しばらくお待ち下さい。

この問題に取り組む前に、そもそも輪郭線とは何なのかを検証というか、いろいろ調べてまとめてみましたのでご覧下さい。
まあ、勉強不足の面もございますが、ちゃんとまとめてみると、自分でもそういう事なのかな~という発見がありました。

----引用
 まず,輪郭線というのは,3次元空間には存在しない。これは絵を描くという行為における発明であって,実在する線ではないのだ。こういった発明を,人間は長い時間をかけて蓄積してきた。
 一方,CGは「グラデーションでしか表現できない」。だから,「3DCGで,影なしで作画できるならやってみろ,と僕はいう」。輪郭線にしても,デジタルな計算結果として出てくる線と,絵としての輪郭線は異なっており,現状ではアナログで描いた線をスキャンして使うしかないのだ。
----引用

↑最近の富野御大のご発言。


----引用
やっぱり鉛筆で描いたもののほうがいい。鉛筆で描くことがアニメーションの初源だ。動きを世界を鉛筆で描こう!
----引用

↑ポニョをつくられたときの、宮崎駿監督のご発言。


日本のアニメを作ってきたお二人が、方向性は違いますがCG(3D)を否定する様な発言をされています。その中で、とくに輪郭線に関すると思われる発言をピックアップしてみました。3Dをやってると出てくる問題を見事に突いたとても重要な発言だと受け取りました。お二人とも過去に最先端かつかなりの予算を使って3Dに取り組まれてます。その上で、3Dの問題点を突いた発言だと考えられますので、かなり重要なメッセージだと思われます!

しかし、この言葉の前にただひれ伏してしまっては前に進めません。尊敬するお二人ではございますが、ここは真っ向勝負(というと大げさですが)を挑んでみたいと思います。


・輪郭線というのは、
 3次元空間には存在しない
・やっぱり鉛筆で
 描いたもののほうがいい


この発言について、どういう意味があるのか実際にいろいろと文献を読んでしらべてみました。


『輪郭線というのは,3次元空間には存在しない。』

この発言に間違いは無い様に思います。たしかに現実の世界には輪郭線などあるはずがありません。しかし次の画像をご覧下さい。





四角形が浮き上がり、無いはずの輪郭線が見えませんか?

これは主観的輪郭線と呼ばれる現象で、なぜそう見えるのかは分かってません。
この錯視から分かることは、どうやら、人間は光学的に眼球の水晶体を通してものを見てるだけではなく、映像に何か意味を付加しているらしいのです。二つの目で見たときに物体の距離感が分かるのは視差によるものですが、片目でみてもある程度前後関係が分かります。もしくは、二次元に投影された映像を見ても立体感が分かりますよね。
それは、物体の境界に輪郭情報を付加し、物体を浮き上がらせているからなのです。
もしこの能力が無くなったら(脳の一部が破損したら)、世界のすべては平面にしか見えないでしょう。

つまり輪郭線の正体は、脳が世界を認識するときに付加している情報が元になっていて我々が絵に描く輪郭線とは、その情報を実際に図式化したものだと考えられます。


↑非常に結論早かったですが、詳細はこの本を読んでみてください。


現実世界に輪郭線は存在しないが、
輪郭線の元になっている
付加情報は(脳内に)存在する!


脳の付加情報とそれを図式化した絵の輪郭線が一致するため、輪郭線で描かれた絵もまた、脳にとっては立体物としてとらえる事が出来ると考えられます。むしろ、付加すべき情報がそのまま最初から存在してるわけで、脳にとってはこんなに有難い話はありませんw。

さて、もうひとつの発言である『やっぱり鉛筆で描いたもののほうがいい』

これは、どういう事なのでしょうか?

絵を描くという行為は、実は存在しないはずの付加情報を視覚化している行為だと言えます。分かりやすく言えば、脳の付加情報と一致する線を引ける事が絵がうまいと言う事だと言えます。

そういう意味で言えば、3Dの輪郭線も脳が好む位置に引いてやればいい訳です。しかし、現時点で言えば、いろいろなトゥーンインクを引く技法がありますが、脳が見ている付加情報と一致する線を自動で引くことは、なかなか難しいのです。(と思われます。)

なぜかというと、この付加情報は、若干曖昧なところがあって、確実にこの線が正しいというモノではないからなのです。この曖昧さ加減が、コンピューターにとっては厄介なところです。また、形が実際に存在する写実的なものと大きく異なっていても、脳が理解できる法則に従っていえれば許容されてしまうというのもコンピューターには厄介な点です。(これは輪郭線だけの問題ではなく、もっと厄介な問題を含んでいます。)

職人は、一本ずつ線を手で引きながら、脳が好む付加情報と一致するか確認しながら線を引いてるのですから、コンピューターが自動で引いた線より心地よい線が引けていると考えられます。

しかし、基本原理に戻って考えると輪郭線は絵を描くために存在するのではなく、元々人間の脳が物体の前後関係を把握するために付加している情報を図式化したものであり、実際の脳にダイレクトに前後関係を把握させられる発明であると言えます。

なんだか簡単な事をものすごく難しく書いてる気がしてきましたw。
で、結局のところ3Dアニメに輪郭線は必要なのでしょうか?

実際の世界を見るとき、脳は輪郭線が無くてもそこに輪郭を見出そうとします。よって、写実的なものを目指せば、3Dにとって輪郭線は無くても問題無いと言えます。しかし、絵として考えるなら、図式化された輪郭線のある絵の方が脳にとっては楽に読み取れる情報だと言えます。
3Dであっても、そこに脳が見出してる心地よい線を引いてやれば、付加情報不要の空間認識が成立するわけです!

そういう意味では、3D云々ではなく、絵における輪郭線のあるものと無いものどちらが良いかという判断でしかなく、無くても良いが、あればそれなりに効果が期待できると言えます。

ただし、現時点では職人の引いた線の方がコンピューターが自動で抽出した線より上なのは間違いありません。といっても、私は手書きに勝てないから3Dの輪郭線は、やめようという事にならないと思います。むしろ、3Dでも輪郭線を引く事は、意味があると感じています。
従来職人だけが知っていた、脳が心地よく感じる付加情報を明確にする試みとして意義があるのではないでしょうか?

難しく書きましたが、この問題に対しては、簡単な目標を掲げて努力する事ができます。

職人の描いた絵に似せた位置に線を引く!

ただ、これだけでもかなり脳が好む付加情報に近い位置に輪郭線が引けるのではないでしょうか?

輪郭線について確実に言えるのは、
鉛筆で描くこととか、現実の世界に無いだとかそういう問題ではなく、
その線は確かに
存在するのです‥。
私たちの脳の中に!!



さて、次回は実際に3Dの絵に輪郭線を引いてみて、どういった線が悪くて、どういった線が心地よいのか検証してみたいと思います!
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▼宮崎先生については……
soodさんの発言

色々手を出してみたけれども、手書きという作風が最も好み、宮崎アニメというものを一つのスタイルにしたのが手書きっていうのがあると思いますよ
何よりも手書きだからこそできる線の柔らかさ、暖かさが好きというのがあると思いますよ?
っと駄文を失礼しました

ちなみに、3Dについては、作品によりけりだと思いますので両方賛成なんですよね……


-さんの発言

soodさん
こめんとありがとうございます!

そうですね。作品内容にあわせてスタイルを変えることが重要だと思います。

▼輪郭線の意見
blackmanta22さんの発言

ツイッターで2度目の意見募集をみたので書きます。
好きですが、全く専門家ではありません。

要は、伝わればどちらでもいいと思います。
浮世絵も日本画も、両方の表現や演出がありますよね。

輪郭線を入れることで、記号臭が強すぎる、などのような弊害(?)が出るなら止めたほうがいいのかもしれませんし、線が無いことで、製作者の意図とは別の印象が出やすくなるようであれば、わざわざ線を入れる価値があると思います。

どちらの方が、意図が伝わるのか、と言う演出の問題であり、創作ポリシーで考えることではないような気もします。語弊がありそうな言い方をしてしまいましたが、重要なのは、製作者の意図が受け手に、どちらの方法を取った方が、伝わりやすいか。という選択のひとつではないか。と、考えます。

ただし、思考停止せずに、こうして議論や考察を続けることは、非常に重要なことと思います。

乱文失礼しました。がんばってください。


-さんの発言

blackmanta22さん
コメントありがとうございます!

そうですね。意図や演出が重要だと思います。


▼気持ちの良い輪郭線を求めて
@clearmaさんの発言

脳内に在る2Dの輪郭線イメージと3Dから得られる幾何学的な輪郭線が違うのではないかと言う仮説は,CG技術者に取っては革命的な発想です!これは,既存のモデラーやTeddyの技術基盤を揺るがす大事件ですw。ただし,モデリング(造形)に時に用いる際の輪郭線と画風の表現としての輪郭線イメージは,若干意味合いが異なるのかも知れませんが。

NPR(非写実的レンダリング)の分野でも,その違いに言及した研究例は存在しないと思います(私はその専門ではないので間違っているかも知れませんが)。「気持ち良く感じる2D輪郭線」ってとても興味があります。私事で恐縮ですが,毛筆書きのキャラクタを動画化する仕事の依頼があり,線分をどのように変形させて動かせば心地良く自然なのか苦慮しています。最終的には,形状そのものと,その意味を同時に考慮して,何らかの経験則から自動判別できるのではないかとも思います。ただし,輪郭線の選び方が「作風,表現したいもの」にも影響するので,アニメーターの意図を組み取れるようなシステムが求められているのではないかと,勝手に想像しています。

乱文失礼致しました。


marsunさんの発言

@clearmaコメントありがとうございます!

3Dそのものをモーフィングする方法とレンダリング後に変形する方法があると思います。わたしは前者ですが、Swift 3Dなんかでベクターでレンダリングしたものを変形している人の作品に絵の心地よさを感じました。ただ、ちょっとカクカクした線になるのが欠点ですけどね。毛筆ものは最近よく見かけるようになりましたが面白いですよね。


aaaxさんの発言

素人意見ですが。

絵の線は「暗記」+ニュアンスで描かれているように思います。
ここで言う「暗記」とはアングルとキャラによって、線を描く・描かないが決まっているということですね。

3DCGで人が描くような線を描かせるのは非常に難しいのはここのあたりにあるのかもしれません。
自然なアニメにするには、人の手で加筆・修正が必要ですね。
でも、まだまだ技術が進歩して人の手を最小限入れる程度まで極めることはできると思います。

モデル自体も輪郭線を描かせるという前提でモデリングする必要がありますね。3次元的に矛盾していないモデルとアニメっぽい輪郭線が出るモデルは全然違うと思います。映画の「いばらの王」はカット毎にモデルに相当手を入れているようです。

「アニメ調の3D」という新しいジャンルとして開き直る方向もありますがw


marsunさんの発言

aaaxさんコメントありがとうございます!

暗記ですか。興味深いですね!
いばらの王は良く出来てましたね!サンライズ荻窪スタジオはすばらしいチームだと思います!

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検証:3Dアニメに輪郭線は必要か?その2 

検証:3Dアニメに輪郭線は必要か?[まとめて読む方はこちらから]


今回予告では、実際に3D上に線を引く予定でしたが、その前に輝度とコントラストについて認識を整理しておきたいと思います。今回書いてる問題は、かなり以前から暖めていた秘蔵の内容です。ちょっと自信があるというか、3Dアニメを作るうえでとても重要な事なので頑張って書きました。このブログを訪れたのも何かご縁です。長いですが、ぜひご一読下さい。

※なお、話がややこしくなるので「3Dアニメはなぜ動きが硬いのか?」に出てくる変形の話とは分けています。

下の二つの図をご覧下さい。どちらも有名な錯視です。画像は「北岡明佳の錯視のページ」から拝借させて頂きました。

test12_tume2.gif
↑動画ではありません。静止画ですが動いて見えますよね。


test12_tume2.gif
↑中心の+印をじっと見てください。しばらくするとまわりの色が消えます。

これは、以前からぼんやりと感じていた事をすべて解決してくれる魔法の様な実験です。

なぜ、動いたり消えたりするのでしょうか。

どうやら人間の目は微小に振動しているらしいのです。なんの措置もなしに、脳が世界を直接見ることがあれば、世界は揺れているわけです。ところが、脳にはそうした問題を解決する振動補正機能の様なものがあるらしいのです。輝度の組み合わせによって、振動補正がきかない事があって、上の錯視の様に静止画が動いて見えるわけです。もしくは、振動補正がききすぎて画像が消失してしまうのです。
(※上記文章は学術的には正確な解釈では無いかも。分かりやすく書いてますのでご注意を。)
何にせよ、たしかに動いたり消えたりする性質があるのは間違いありません。

もうひとつ画像を見てください。同じ形の画像ですが、輝度が高い黒い線の方がディティールまではっきり見えます。


rinkaku.gif
↑左右の絵はまったく同じ形状です。輝度が高いものはディティールまで見えますが、低いものはあまり見えません。

では実際にコントラストの違う画像をアニメーションしてみて残像の残り方を見てみましょう。




これらの実験から、輝度・コントラストが高い情報は、脳にとって読み取り解像度が高く、かつ読み取るのに時間がかかっている事がわかります。

フリーダムが12FPS(2コマ)で作られているのは有名な話ですが、はじめてあれを見たとき驚きを感じたのを覚えてます。それまでのセルシェーダーのアニメよりも圧倒的に自然に見えたからです。その理由も残像にあると推測しています。そもそも輪郭線のあるコントラストの高い絵は、12FPS程度が良いのではないでしょうか。もちろん作画でもフルコマで作画する事がありますし、絵の前後の変化量に対して動きは決定されるので、必ずしもフレームレートだけでは判断できないのですが、輪郭線のあるアニメにおいて一般的な動きについては、24FPSよりも12FPSが自然に見えます。

実は、アニマティックを作っているとこの現象を肌で感じることがあります。12FPSだとアニマティック時の動きが少しカクカクして見えるのに、輪郭つきでレンダリングするといい感じになるのです。逆に12FPS用に作った連番画像をAfterEffects上で並べたときに、2コマ設定せずに24FPSで動かすとこれも不思議なことに滑らかに動かずにカクカクして見える事があります。残像に対して動きが速すぎて読み取れないからだと思われます。

作画アニメが2コマで撮影しているのは、省力化のためだという先入観があって、簡単にFPSを補完してくる3Dでコマを抜くなんてもったいないと多くの人は考えてしまいますが、それは間違いです。適切なFPSで残像の残り方を意識して動かす必要があります。ちなみに、輝度コントラストの高い映像をやたらコマ数を増やして点滅させると‥有名なポケモンショックのような事態が発生します。(いまはそれをチェックする機械なんかもあるそうです)これも輝度が高くコントラストが高い映像が読み取りに時間がかかること関係しているのではないでしょうか。

ちなみに、一般的な3Dではこういった残像の問題を解決するにはブラーを使用します。


↑一応比較で用意しました。確かに残像は軽減されますが、ブラーの調整をしてないというのもありますが、輪郭線のある絵はあまりブラーにはむいてないようです。さらにコマを抜いたものにブラーをきちんとかけるのは、なかなか自動では難しいのです。(手作業でブラーを描いたらまた違う絵になると思います。通常のブラーとは違う、お化けと言う表現に近いアニメブラーという方法があります。アニメブラーについてはまた別の機会に検証したいと思います。)


輪郭線の無い3Dアニメにトメの演出を使ってしまうというのもよく見かける問題です。
これは、実は3Dをやってる人は経験的に誰でも知っているのですが、止まっている3Dはスチル写真の様に固まって見える現象が起きます。ある3Dの教本には4フレーム程度(0.4秒)くらいのトメが適切だと書かれています。作画アニメの演出の常識からすれば、大きな制限です。これは、輪郭の無い3Dが残像に残りにくいために発生する現象だと考えられます。

そのため3Dをやっている人は、やたらと待機モーションを入れたりして、何もしてない画面でも動きを入れたがりますが、それはそうしないと駄目だからそうしてるだけの話です。

今度3Dアニメを見るときは注意してみてください。数人が映ってる画面でもすべてのキャラになんらかの動きが入っています。逆に作画アニメではしゃべっている人物だけが動いています。どちらも不自然には見えません。しかし、これを逆にするとちょっとやばい感じの映像になります。


↑実験でつくってみました。そもそもトメを行ってる場所がかなり不自然なのですが、比較すると輪郭がある絵の方が安心できますw。3Dは、本当に氷ついたようになってしまいます。※ちなみに、ふつう作画アニメではは止まってる状態からちょっと動いてまた止まるみたいな演出が多いですね。

これらの問題は作画アニメと3Dを混ぜたときによく発覚します。動きや演出などに影響があるため、スタッフ同士(3Dと作画)で意見が真っ向から対立する(というか平行線)になってしまうこともあるでしょう。お互いが理解して、ものを作ることが理想なのですが、性質が極端に違ってくるのでなかなか難しいのが現状かもしれません。

知ってる人は知っている現象ばかりですが、意外とこの理屈をうまく説明できる人は居ないみたいです。また、こういいった問題をきちんとまとめているサイトもあまり見かけません。学術的に正しいとまでは言い切れませんが、今回はかなりうまく説明できていると自負しておりますw。3Dと作画アニメの両方をやった事がある人は思い当たる節多々あるはずですよね。(ご意見お待ちしております。)

輪郭線があってコントラストの高い映像と
輪郭線の無いコントラストの低い映像では、
残像の残り方が違うので
演出方法がまるで違ってくる!


3Dアニメに輪郭線は必要か?という問題ですが、前回の結論同様に、違いを理解して作る必要があるという事であって、輪郭が必要か不要かの問題ではないのです。(でも、これじゃあタイトル釣りだw)

3Dアニメを作画アニメ風にレンダリングして輪郭線をつけると、当然ですが演出方法は従来の作画アニメよりになります。それによって、得られるものと失うものがある事は明白です。

押井監督がスカイクロラのときに発言されていたコメントを抜粋しておきます。

-------------------------------------------------抜粋
■押井 守監督
セルシェーダーというやつですね。
輪郭線が出てくるような、そういうレンダリングなんです。
いわゆるセルシェーダーと言われているもので、3次元でモデリングして、モーションを付けて、2次元的に吐き出して、輪郭線を全部出していくというやつです。

僕は、セルシェーダーってやつは嫌いなんですよ。(会場笑)

あれにはあまり未来を感じないんです。
将来性がある方法論には思えない。ここにいらっしゃる人もそうかも知れないけれど、確かにアニメーションが好きだっていう人は、例外なしにアニメのそのライン、線が好きなんですよね。塗り分けられた色面と線、いわゆる「絵」ですよね。僕自身が絵描きじゃないということも大きいのかも知れないが、3次元を経由してそのアウトラインを出していく、輪郭線を残していくということには、映画的にあまりリッチなものを感じない。

実際、今回の『スカイ・クロラ』にもそういう提案もあったんです。
あの戦闘機のボディに貼り込んだテクスチャー、実は相当積み重ねている訳ですが、あれは単なる背景で描いたテクスチャーだけじゃなくて、様々な情報が乗っていて、それを生かす方向で行きたいということになった。
輪郭線が入った瞬間にある種の抽象が入るということなのですが、それには、僕はあまりこだわりたくない。

一方で、キャラクターの方には線が残っているわけだけど、それをどうやってマッチングさせるのか、『イノセンス』の時から、テーマとしてやって来た。
幸いにも僕の現場の場合には、二次元の線のあるものと、三次元の線のないものをマッチングさせるというノウハウの蓄積が非常にあったので、ためらわずにセルシェーダーというか、二次元的な処理は止めましょうということになった。それは、ほとんど迷わなかったですね。

逆にアニメーションをやっている時、セルでやった時も、肌のこのラインが大嫌いで、『攻殻機動隊』などもそうですが、出来るだけ肌を白くし、フィルターで少し輪郭を飛ばして、ラインを意識しないで見てもらう工夫をしていたんです。
昔は『攻殻機動隊』で、かなりどぎついフィルターを使い倒した訳ですが、デジタルになって、選択肢も広がったので、昔やれなかった、線を離れたアニメーションになった。それは、いずれそちらの方向にいくだろうという予感があったからです。

もちろん、2次元的なアニメーションも残るだろうし、そういう需要もあっていいと思うんです。

ただ、どこかで、あえてアニメと呼ぶよりは、映画として考えた場合、どちらがよりリッチな映像を作れるか、表現力を獲得出来るかという時に、セルシェーダーにこだわる人というのは、絵を描く人なんですね(会場笑)。

僕は、直感的にそれにあまり未来を感じないんですよね。
「それ、たぶんやってもダメだよ!」って(会場笑)。

もちろん、内容の変化を出すことはあるんですが、映像それ自体でいえば、まだ三次元で試していないこともあるのですが、最終的にフィルムに出力した段階で、上映する段階でみんな二次元に変換されているんです。三次元は、あくまでもバイバスに過ぎない。経由してるだけですから。だからこそ、途中経過はどうあれ、最終的に何がしたいのかということから、僕は逆算して映像を作りたい。
-------------------------------------------------抜粋

引用元はこちら
http://anime.nifty.com/skycrawlers/column/talkshow/page_06.htm

押井監督は輪郭線が嫌いなんですよねw。当時これを読んだときちょっとショックを受けました。それでも、このサイトでは輪郭線のある3Dをやろうと思ってます。そういう意味では、私は絵にこだわる人なのかもw。

ただ私も、予算のある劇場版なんかには、輪郭の無い(もしくは弱い)映像が適しているだろうと考えています。

ではなぜ輪郭線のあるものを選んだのかと言いますと‥。私のような3Dからスタートした人間にとって作画というのは逆に未知の部分があって、作画再現の課程で発見することや学ぶ事がとても多いのです。制約があるなかで作られた映像の工夫にはいつも驚かされます。むしろ、最先端であるはずの3Dが劣っていることも多いのです。なので、ずっと作画再現の3Dアニメを作り続けるというわけではなく、一度完全に作画に見える3Dを目指すことはとても意義があると感じたのです。また、現時点において、商業や自主制作を含めて完全に作画を再現できた3Dをまだ見たことがありません!(かなり近いものは出てきてますが)それは、技術や理論において何か解明されてない問題がある事を示しています。そこの部分がとても面白いなと思ってるわけです。

それは3Dの技術だけではなく、
人間がなにをどう感じながら
世界を見ているか‥
そのメカニズムを知る事
にもつながると思います。


また、この取り組みの先には、もしかすると、両方の良さを持ったものを作ることもできるかもしれません。実は告白しますと、3Dゲームをつくっていた私が本格的に映像をやろうと思ったきっかけは、上記に引用した押井監督のインタビューにあります。3Dしか知らない私は、押井監督と逆のアプローチで3Dと2Dが融合したものを目指せないかと思ったのです。(恐れ多いやつですなw)

ところで、あまり考えたくないのですが、作画系3Dが今の手描きを侵食してしまうとか、そういう類の問題があります。3Dで作画表現をやることは、すごくコストが安くなる面もあるので(今はそうでもありませんが、とくに将来において)、その流れをとめることは、おそらく私には出来ません。そのとき、大きな劣化が発生すると思われます。文明とか産業というものは、そうやって劣化しながら進歩してきたのですから‥。そうなったとしても、劣化作画アニメが氾濫する事態は可能な限り避けるべきですし、作り方の問題ではなく、最終的な映像にこだわった結果を提供するために努力するしかないと思っています。

なので、劣化作画アニメの氾濫には断固反対していますし、そういったものに、取り組もうとは思っていません!そんなもののためにやってるのではないと断言しておきます!

そういった作画アニメを侮辱する行為は
絶対にしたくないのです!


※なおここで言ってる劣化作画アニメに相当するものは現在まだ無いと思います。黎明期にチャレンジして作画より劣っている事は当然のことで、作れるようになってから必要以上にコスト削減をしたものを劣化作画アニメだと考えています。

今回もまた、理屈になってしまいましたが、次回こそは、実際に線を引いていく検証に入りますよ!

ヒロスケさんの発言

んー、すげー。
単に技法的な制約じゃなくて脳の情報処理の問題かぁ。
メモメモ。
目から鱗が10枚落ちた。



通りすがりさんの発言

とても興味深く記事を読ませていただきました
素晴らしい考察だと思います

ただ、「作画アニメ」という言葉は通常
「作画の優れたアニメ」という意味で使うため
なにやら違和感を感じます
「手描きアニメ」のほうがしっくりくるような・・・

▼はじめまして
srさんの発言

興味深く拝見しております。
さまざまな考察をこうして文章化してまとめられるのは素晴らしいですね。
しかも実際のテスト画像なども用意して。

私は押井さんの考えに同意で、日本ではアニメの影響が強すぎて、CG制作者もアニメの記号や形式に引っ張られすぎているのでは、といつも感じています。

POCOYOというスペインのアニメーションをご存知でしょうか。
3DCGでありながらコマ抜き&リミテッドの技法を取り入れ、残像効果を利用した見事なアニメーションです。
背景・モデル・テクスチャ・ライティングを単純化し残像を強く残すことで、輪郭線のない3DCGでもこういった表現が可能になるようです。
参考までに
http://www.youtube.com/results?search_query=pocoyo&search_type=&aq=f


marsunさんの発言

ヒロスケさん

まだまだ検証をたくさんやらないと分からない事も多いですね~。今回は比較的分かりやすい例を使いましたw。

通りすがりさん

な‥なるほど。たしかにその使い方がしっくりきますね。次回から手書きアニメと表記してみます!

srさん

ご紹介ありがとうございます!かわいいアニメーションですね~。背景が真っ白なのと陰影のつけ方が輪郭線同等のコントラストを作り出していると感じました。

アニメの影響が強いのは作る側もそうですが、見る側もそうなんですよね‥。3Dの良作が増えて、見る側が慣れてくれると作る側の選択肢はもっと広がると思います。

3Dで手描きアニメ再現というのは、安易に選んだ道では無いとご理解いただければと思ってブログを書いております。(実際に本気で取り組むかは、かなり悩みましたw。)


▼はじめまして
ブラヴィスさんの発言

僕も3Dで線のある絵を動かすこと勉強しています。
やはり、実際にやっていて線の強弱の問題や影の出し方は悩むところですね。このあたりはシェーダーに頼るしかない問題ですよね。

しかし、アニメーションに関しては悩みがなく作画と同じように3コマどりで、全コマ手付けしていくのがBESTだと思うのです。

おそらく自動補完では無理ではないかと・・・

そうやって作った動画があるのでぜひ参考になればと思います。
http://fantasymaster.web.fc2.com/index.html
もしくは
http://www.youtube.com/watch?v=Fu9XccIS2qw&feature=player_embedded


marsunさんの発言

ブラヴィスさん
はじめまして。コメントありがとうございます!

線の太い力強い絵ですね!作画もされているだけあって動きもいいですね~。

>しかし、アニメーションに関しては悩みがなく作画と
>同じように3コマどりで、全コマ手付けしていくのが
>BESTだと思うのです。

3Dだけをやってると、その考えに至らない事が多いんですよね。特にゲーム業界では、映像と違ってFPSは可変式で実機上でどれだけFPSを上げるかに苦心するので、コマを抜くなんてとんでもない話だとなるわけです。それにコマを抜く事とFPSを下げることは、厳密には違うというのも説明に苦心するところです‥。作画のタップ割り的な線と線の中割りとして最適の位置にキーを打つという事は、おっしゃるとおり全コマ手付けがベストだと思います。なので、なぜわざわざ当たり前の事を、錯視まで引っ張り出して説明するかというと、そういう背景があるからなのです。


輪郭線についてですが、次回は神風動画さんなんかもやってるシェーダーに頼らない輪郭線の出し方を公開しようと思いますのでご期待下さい。リアルタイムでもポストエフェクト(3D描画後に二次元的に処理する)の方がきれいな気がしますし、自動的に描かれた線とはちょっと違う手描き感が出る気がします。XSIのシェーダーもかなり調整するときれいに出ますが、前作では結局思った線が出なくて線を弱くしてしまいました‥。

コメントとは関係ありませんが、ゲームってFPSを上げるときコマとコマの間を補間するわけですが、キー入力判定だけは高いままにして、映像は補間しないで(デザイナーが打ったキーの通り)表示したら、トゥーン系ゲームのアニメっぽさがもっとあがる気がするのですが、どうでしょうかね??さらに厳密にクォリティを求めるなら、アタリ判定やキー入力のある処理のときだけ補間するとか‥。(たぶん割と簡単にできると思うので、だれかやってみてくださいw)リアルタイムでのイベントシーンなんかが異様に高いFPSだとヌルヌルするのが気になるんですよね‥。

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検証:3Dアニメに輪郭線は必要か?その3 

検証:3Dアニメに輪郭線は必要か?[まとめて読む方はこちらから]


大変更新に間が開いてしまって申し訳ありません。今回は兼ねてより予告してましたとおり、実践編として3Dモデルに対して線を引いてみたいと思います!

「実践編ってSoftimageかよ?でも、Softimage持ってないし~」というあなた!今回の手法は、どんな3Dソフトでも関係ありません!

必要なもの
・頂点カラーがレンダリングできる3Dソフト
・AfterEffectsもしくは輪郭検出機能があるコンポジットか2Dソフト

条件はこれだけです。一応SoftimageとAfterEffectsを前提に話を進めますが、理論的には上記の機能があれば実現できるものです。

かつて、私もいろいろなトゥーンレンダリングの手法を試してきました(といっても主にXSIのトゥーンインクですが)。しかし、どうしても納得のいく線が引けなかったのです。

かなりそれっぽい線は引けるけど、
どこか痒いところに届かない!


今回辿り着いた技法は、私にとって今までの輪郭検出技法の中で一番しっくりくるものでした。

実技に入る前に今あるメジャーなトゥーンについて紹介しておきます。(分かる範囲ですが)

■反転ポリゴンを使用する方法
リアルタイム系では一番メジャーな技法。かなり良い線がでます。角度によっては線の強弱なんかも出たりして、味のある線になります。ソフトも選ばないし、ある意味、一番無難なやり方です。
XSIだとディスプレイ>パフォーマンス>背面除去、レンダリング時にはフロントのみレンダリングを忘れずに!
自前で反転したモデルを用意してもいいですし、プログラム的にやることも可能です。
ただし、いくつか難点がありまして、立体的な線しか出ない‥。洋服のラインとか、立体的ではないけど線を出したいときにはテクスチャーで描くしかありませんが、ラインの解像度に違いが出てしまいます。あと、アップにしたときにラインの線が太くなってしまうので困ることがあります。プログラム的に制御してると、反転したポリゴンの距離を縮める事で対処できたりします。

■XSIのトゥーンレンダリング(主にToon_Ink_Lens)
かなり、いろんな事ができます。このラインはマテリアル単位でも制御できるのですが、基本はカメラ上で制御されます。カメラに貼り付けてやれば、その瞬間すべてにインクラインがつきます。その後で、いらないところを個別で消していく感じで実装します。
最大の欠点は、レンダリングが遅いこと。これってたぶん、メンタルレイが遅いからだと思うのですが、ライトをはずすと速くなったりとか、ラインとライトは関係ないだろう!と叫びたくなりますが、私の想像を超えた計算がされているのでしょう。使用する場合はパス分けが必須(おすすめ)です!「たいせつなじかん」では、このトゥーンを使用しましたが、ほんとうにレンダリングの遅さには涙が出そうになりましたwwwインク以外にも、ライトの影響を無視して陰をつけられるリムライトという設定も便利です。しかし、パラメーター制御でインクの出かたを調整していると、なんだか切なくなります。

■LightWaveのUnReal Xtreme2
http://d-creation.sblo.jp/
XSIに比べるとかなり高速です。設定も簡単で、かなり優良なプラグインですが、無料というのもうれしいところですw。Lightwaveユーザーなら使わない手は無いかと思います。これの駄目なところってあまり思いつかないです‥。意外に最強な気がするw最大の欠点はLightwaveしか使えないことですかね‥。でも、これのおかげでLightwaveの存在意義が大きくなってるのも事実で、もっと盛り上げていきましょうw他にも、LightWave標準で輪郭線を出す指定がありますが、あれも意外に使えるようです、線が均質になるのは否めませんが、レンダリングが速いのは魅力です。LightWaveは実はトゥーン系アニメにおいてはかなり有利なソフトだと思います。

■MAXのfinalToon
http://cebas.com/products/products.php?UD=10-7888-33-788&PID=37
一番使われているのがコレじゃないですかね?私は触ったことないのでなんともいえませんが、TVアニメなんかだと大抵これが使われていると聞きます。機能も豊富ですが、有料プラグインです。レンダリングが速いそうですが、どのくらい速いのか気になります。機能的な欠点は無いと思いますが、このプラグインを一本買うお金でLightWaveを購入してお釣りがきますw。

■MAYAのトゥーン
実はまったく詳細を知りません。情報もあまりないですね‥。あまり良いうわさは聞かないですが、ちゃんと作ってる方もいるので、ある一定以上のレベルが可能なのは間違いないようです。XSI同様に、レンダリングが遅いのはメンタルレイのせいですかね~。トゥーンの場合メンタルレイが得意とするフォトリアルな絵と違って、厳密にレイを飛ばして計算しなくてもよいのですが何か頑張ってくれてしまってるみたいで‥頑張りすぎるメンタルレイに対していたたまれない気持ちを通り越して怒りすら覚えますw。まあそこは得手不得手があるということでしょうか。そもそも、トゥーンアニメをつくるのにMAYAは明らかにオーバースペックなソフトだという気がしますw。まあ、いまのところ3Dソフトの中ではいろんな意味で最強のソフトであることに間違いはありませんけど。

いろいろなインクラインを引くツールやら技法が有るわけですが、ソフトがバージョンアップしたりとかしなかったりとか、最新版に対応しなかったりとか、販売会社が変わったりとか、そもそもソフトを乗り換えたりだとか‥。その度に、新しいトゥーンを覚える必要があったのですが、もうその悩みからは開放されます!!

3Dソフトやプラグインの違いによって
線が変わる事がなくなります!


それでは本題に入りたいと思います。
今回はこれらの3D的なトゥーンインクは、一切使用しませんw。AfterEffectsだけで線を引いていきます。といっても、まったく3Dを使用しないわけではなく、ちゃんと使います。ちょっと使い方がコロンブスの卵的です。まずは、一番気になる部分から検証していきます。

本当にAfterEffectsの輪郭検出で線が引けるのか!!

元々このやり方は、神風動画さんのセミナーで聞いたネタなんですが、私はてっきりLightWaveメインの神風動画さんはUnrealを使ってると思ってたのでAEで輪郭検出してます‥とのことで、かなり驚きました。

で、早速家に帰って輪郭検出(エフェクト>スタイライズ>輪郭検出)をポチッと‥。

ugyaaaa.gif
↑うわああああああ!なんじゃこりゃあ!

こんなもので、きっちり輪郭なんぞ引けるわけがないと思ったのですが‥。

でも、神風さんができるとおっしゃってるのだから
なにか方法があるはずだと‥


そこからいろいろと工夫する日々が始まりました‥。



雨の日も





風の日も





夏の雲とか





冷たい雨とか





秋の風の匂いとか





傘に当たる雨の音とか





春の土の柔らかさとか





夜中のコンビニの安心する感じとか





放課後のひんやりとした空気とか


そんなことを考えながら
日夜研究の日々を送りました‥。

その工夫の工程はざっくりと省略しまして‥。

http://mega-mouth.sakura.ne.jp/blog/line.zip
↑はい、これでOKです。シンプルなプリセットです。差し上げますので、使っちゃってくださいwww

preset.gif
↑プリセットの中身はこんな感じ。

一応説明
1.輪郭検出
2.彩度を落とす(モノクロにする)
3.レベル補正(グラデとかを飛ばす)
4.線を濃くする
5.線以外を透過
6.2値化
7.OLMスムーサー http://www.olm.co.jp/b/rd/2008/10/start_olm_smoother.html
8.線の太さを調整

線がうまく出ない人は、レベルを調整してみてください。

輪郭検出する元が写真だったり、リアルな3Dだったりすると検出に失敗します。うまく検出される画像はイラストっぽい画像に限定されます。

miss_20091229055154.gif
↑はい。駄目ですね。3Dではうまく線が出ませんww

ここでチェス版をひっくり返す逆転の発想です!!

3Dのモデル上に、AEが輪郭検出しやすいように色を塗ってやればいんじゃない??

vertex_color.jpg
↑頂点カラーを使用して塗り分けたモデル。当然別パスでレンダリングして後で合成するための素材です。
※ここでちょっと知識のある人に向けて注意!これは法線マップではありません!手塗りの頂点カラーです!

line_20091229055743.gif
↑これをさっきのAEの輪郭検出プリセットで変換!


頂点カラーを使用する利点は、解像度に依存しないからです。
塗り分けてしまえば、そこに輪郭が出るという単純な仕組みなのでテクスチャーで塗り分けても問題ありません。

AfterEffects+塗り分けによる輪郭検出の利点
・突起物に色を塗ると角度によって出っ張りを表現できる
・明度や彩度の組み合わせで線の太さが変わる(強弱も可能)
・立体感のない部分にも線画引ける(解像度に依存しない)
・慣れると好きなところに線が出せる
・各部位で自在に線の出し方を変えられる
・レンダリングが速い

kyoujyaku.gif
↑強弱を利用した線の抜きの例。こんなことも工夫次第です。

AfterEffects+塗り分けによる輪郭検出の欠点
・塗り分けが大変www
・同じ色が重なると線が消える

プログラマーやオペレーターの方からすると、なんとも面倒なやり方に見えるかもしれません。しかし!デザイナーの人なら分かってくれるはずです。確実に思った場所に線が出る気持ちよさを!!!

従来の技法的に言えば、マテリアル境界に線を引く方法とほぼ同じことなのですが、グラデーション側には線が出ないという特性を活かして、法線の折り目等と同等の突起物にも線が引けます。

思い出してください。富野監督の言葉を!

輪郭線というのは、
三次元空間には存在しない

そうです!私たちは二次元である写真を見ても立体を認識できます。いままでの技法は、3D上で線を引くことに拘りすぎてたのではないでしょうか。法線がどうだとかではなく、案外原始的なやり方の方が、脳が好む線を引けるというのは、初回で考察した原理と一致します。

輪郭線の元になっているのは脳の中に存在する付加情報です。それを実際に図式化したのが絵における輪郭線です。脳にとって気持ちの良い輪郭線を引けるのは人間自身であり、それがどういうメカニズムなのかは現代の科学をもってしても解明されてないのです。しかし、そんな理屈とは無関係に絵描き達は、自分たちが見ている世界を手先から出力する事が出来るのも事実です。

それが、宮崎監督の言う
えんぴつで書いた線です!
(シャープペンシルとえんぴつの比較はまた別の話でw)

だとしたら、どこに線を出すかをデザイナーが細部まで指定する事は、えんぴつで書くことに限りなく近い行為ではないでしょうか?

特に法線の折り目といった輪郭が出そうな場所であっても、絵描きさんは、余裕で線を省略したりしますよねw。逆に、まったく立体形状とは無関係の場所に線を引いたりもします。

そもそも、線画においては、線とは輪郭線だけの事ではなく、あらゆるものが線で表現されています。

傷だったり、影だったり、模様が線だったり。それらは、輪郭線と混在して見分けがつきません。

どこに線を引くかに、
数学的な根拠は無いのです!


あったとしても、それが解明されてソフトに実装されるのは、人工知能が完成した後に違いありません。


ぜひ、デザイナーの方もそうでない方も一度この技法を試してみてください。最初は面倒ですが、かなり思ったとおりの線が引けます!

とまあ、デザイナー的な利点も多いのですが

何より‥

レンダリングが速い!!!

インクラインについては間違いなく最速であり
今後どんなプラグインが出ても
破られることは無いと確信してますwww

※反転ポリゴンの方が速いと反論もありそうですが、塗り分け素材はアンチエイリアス不要なのです!
(むしろアンチエイリアスは切った方がいいですw)なので間違いなく最速ですw
ただし、線の精度を求めるなら、塗り分け用の画像は倍の解像度がお勧めです。


しかし、この技法で本当にアニメつくれんのかよ!と思われる方もいらっしゃると思いますので
こちらをご覧下さい。





なんと!今年劇場公開され話題になった「星に願いを」というプロが作った同人作品に参加させて頂きました!!!
それも、劇場にいってプロデューサーである里見さんに強引に作らせてくれと頼んで参加してきました!
あの、サムライチャンプルーや乃木坂春香の秘密の里見哲朗さんですよ!!

劇場でサインをもらった後に思い切って声をかけさせていただいたのですが、緊張して挙動不審になってしまいました!

関係ありませんが、劇場公開当日、前の席にふつうに自演乙さんが座っていましたが(ふつうのかっこうですよw)、里見さんとはお友達だそうです。

業界すげぇなオイww

突然押しかけてきた、わけの分からんアニメファンの声に耳を傾けていただいた里見プロデューサーの寛大さに敬服いたします!
お話をさせてい頂いた翌日にはモデルデータを送っていただけたのには、かなり驚きましたがwww。
また、市川監督には、様々なアドバイスを頂き3Dアニメ制作における効率化など大変勉強になりました。

わたしは映像制作に関しては、ド素人で趣味で自主制作をやっている人間です。

会社を辞める前は、
アニメ制作とは何の関係も無い
ふつうのサラリーマンを
やっておりました。


映像制作を趣味ではじめた経歴で言えば、まだ1年たらずの期間しかなくフミコの告白のtete氏よりも浅いわけですw。
そんなわたしにデータまで送っていただいて制作に参加させていただけたというのは夢のようなお話でございました。

なにより、劇場で観て感動した作品の
モデルデータが手元にあるというのは、
ほんとうに不思議な感じで
感慨深いものが御座いました。


ちなみに、本編はLightWaveで制作されていますが、今回のPVはモデルデータを頂いて、XSI上で動かしています。
輪郭線については、今回の記事で使用したプリセットですべて描画しております!

手前味噌で申し訳ございませんが、MA@YAさんのモデルがうまいという点を差し引いても手描き感はかなりの
高さだと自負しております。というか、わたしが凄いわけではなく、誰がやっても同じ結果になりますw。
また、XSIである必要もございませんwww。(単に慣れてたのでXSIに変換しただけです。)

むしろ、うまい人がやれば、
完全に手描きと見分けがつかないものが
つくれるはずです!!!

今回は、頂いたデータに
後付で塗りわけをやりましたが、
うまい人が塗りを考慮しながらモデルを組めば
さらなる手描き感が得られるのは
間違いありません!


31日のコミケで発売されるブルーレイに収録されておりますので、年末のお忙しい時期かと思いますが、ぜひ、足を運んで頂ければと思います!

サークル名:シャリバリ
日程:12月31日(木)
配置:木曜日 東地区 "U" ブロック 41b

それから、なんと本編はiPhoneアプリでの配信が始まるそうで、iPhoneをお持ちの方はぜひダウンロードしてみてください。ちなみにPVは、ヒカリが見た夢という設定になっていますが、本編はSF設定のすごく凝った作品で見ごたえがあります!(攻殻機動隊や電脳コイルが好きな電脳萌えの方には特にお勧めです。)まだ見てない方はこの機会にどうぞ!すでに見たほかのファンのかたに言っておくと、PVは夢の出来事なので、アトランティスが違うアトランティスになっていたりしますが、ご容赦を。(市川監督のご了承もえております。)

なお、今回発表した輪郭検出の技法については、なんら特殊な事もありませんので、自由に作品の中でご使用下さい。

ただ、もし、今回の技法を使って作品が出来たら、わたしに知らせしてくれるとうれしいです!
特にXSI以外のソフトを使用された場合の結果を知りたいです。
多くの人が、この技法を試すことで、さらに新たな技法が生まれる可能性もございます!
また、不明な点がございましたらなんでも質問して下さい!

なお、来年の展望ですが、井上雄彦先生や荒木飛呂彦先生のタッチを3Dで再現できないか研究中です!

hacchi6.gif

最後にシリーズ完結編として結論を出しておきます。
3Dアニメに輪郭線は必要か?という問いですが‥。

絵において線を引く事は重大な発明であり、長い歴史の中で輪郭線だけではなく、様々なものが線で表現されてきました!極端な話、絵において命そのものを、もっともうまく表現しているのが線だと思います!それが、3Dになったら無くなりました~では、さみしいと思うのです!

(結論)
絵描きが線を引きたいと思ったら、
引けばいいとおもう。
▼お久しぶりです。
nora3dさんの発言

>>絵描きが線を引きたいと思ったら、引けばいいとおもう。

感動しました。


marsunさんの発言

nora3dさん

コメントありがとう御座います。
今後も宜しくお願いします!

▼ガジェット通信から来ました。
たつやってやつさんの発言

非常に読み応えがあってぐいぐい持ってかれました。(結論)が、とてもアツいですね。つまるところ、2Dでも3Dでも、「いつ、どこに、いかなる線を引くか/引かないか」の「/」が作り手のなにかを決定づけるのでしょうね。寺田克也さんとかも「デジタルだからこそ絵描きの腕の上手い下手が如実に現れる」とかそんなこと言ってた気がします。乱文失礼。がんばってください、陰ながら応援してます。


marsunさんの発言

コメントありがとうございます!近いうちにより線の強さが出た映像を公開する予定で現在準備しております!ご期待下さい。

▼こんにちわ
エリオットさんの発言

 こんにちわ、エリオットです。
 e_liotと名乗ればわかりますか?ツイッターでフォローしていただいております。

 ボクも映像業界を目指して修行中の身なので、大変興味深く拝見させていただきました。
 ああ、一年で人は変われるのだなぁ、と思うと頼もしくもあり、ならばボクも何かしないとなぁ、と焦ったりもします。

 ただ、すいません、トゥーンレンダリングに興味があるのですが、ずぶの素人のボクにはよくわからんです。引き続き榊さんのブログを掘り返しつつ熟読して知識を深めていきたいと思います。

 ただ、一つボクが考えていたことがあります。
 それは榊さんと真逆の発想で、『セルアニメから輪郭線を消したらどうなるか?』ということです。
 印象派絵画のような、油絵のような動きが2Dで表現されるのでしょうか?もしかすると、この表現の具体例はどこかにあるのでしょうか?興味本位で書いてみました。

 それでは、また。お互いがんばりましょう。


marsunさんの発言

e_liotさんコメントありがとうございます!ガスマスク(?)の方ですね!

輪郭線は実は無いほうが制約が無くなるんじゃないかと思うこともあります。
輪郭線があると、かなり注意してコマを抜いたりツメたりしないといけなくなるので、実は大変なのかなあと。

輪郭線があった方がいいのは、漫画文化をベースにした場合で、絵画的なものをベースにするとまた違うのだと思います。なので、絵画的で平面的な3D表現も興味あります。


▼沢山考えられていて
星真珠さんの発言

たくさん考えられていて感服致しました。
そこまで深く掘り下げて考えたことはありませんが、
トゥーンで制作していた時は、余計な場所にも多々輪郭線が入るので
ここには入れたくない!って思うことが。
都度修正はモデラー泣かせでした。
でも、モデリングの素体がしっかりしていると、綺麗に入ってくれるんです。

輪郭線は、同じく漫画的なところから来るのだと思います。
むしろアニメテイストや、コミカルなものには、ないと
テイスト的に只でさえ描き込みの少ない画面がそのままだと酷く
安く見えるので、やっぱこれには必要だな、と思ったのを覚えています。

その反面、リアル系や絵画的なものにはテクスチャの描き込みの方が
重要で、輪郭線を入れると安くなってしまう。
あえて狙う場合もありますが、基本的には入れない方が纏まりがある。

全部持論ですが。
ではでは、応援しております~(_ _)


marsunさんの発言

星真珠さん
コメントありがとうございます!

素体がしっかりしていることは重要ですね!
たしかにリアル系では輪郭は無い方がいいかもしれません。

目的にあった映像の作り方が大切だと思います!


しゃおふぇいさんの発言

犬を書いたら猫になり、「ポリゴン? なにそれオイシイノ?」な俺ですが、大変興味深く読ませていただきました。
では、技術とか専門用語と化ソフト名とかはさっぱりな俺が、何に感動していたか。
それは、論理と感性が融合していく過程の一端を垣間見たような気がしたからです。
素晴らしい研究と、それを支える情熱に脱帽です。


marsunさんの発言

しゃおふぇいさん

コメントありがとうございます!なんだか、すごくうれしいコメントです!

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